一般社団法人 日本内視鏡外科学会

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演題応募時の倫理的手続き

最終更新日:2022年4月1日

演題応募における倫理的手続きに関する指針について

よくあるお問合せと回答(FAQ)

このFAQで 「倫理審査委員会」と記載されているものは、いわゆる「医の倫理」を審査する委員会ではなく、ヒトを対象とする臨床研究を審査する「研究倫理審査委員会」を指します。

1. 包括的同意とはどのような同意を指しますか?
診療情報や診療の一環として採取された検体(試料)、手術動画などを、将来にわたってさまざまな研究に利用させていただくことを書面で承諾同意いただくものを指します。
2. オプトアウトとはどのようなものを指しますか?
臨床研究のうち、診療データ等の情報や余った検体のみを用いる研究については、国が定めた倫理指針に基づき、対象となる患者さん から直接同意の取得を義務付けない場合があります。この場合、当該研究について情報を研究対象者等に直接通知するか、または当該機関の掲示板やホームページ上で公開し、研究対象者等が研究への参加を拒否 する機会を保障することをオプトアウトといいます。公開情報には拒否の意思表示を受け付ける窓口(連絡先)を明示する必要があります。
一方、フローチャートでカテゴリーCにあたる臨床研究を実施する際には、研究に参加していただく方に文書もしくは口頭で説明・同意を行い、実施する必要があります。これを一般にオプトインと呼びます。
3. オプトアウトの開示はいつまで行う必要性がありますか?
研究開始後、速やかに開示し、研究を終了するか、もしくは発表・投稿完了まで提示していただく必要があります。
4. 手術手技を供覧する目的で手術動画を発表に用いますが、患者の同意は必須でしょうか?
研究目的の手術手技動画閲覧の場合は個別に患者の承諾を得ることが望ましいですが、オプトアウトあるいは包括的同意を得られてい ればよいものとします。過去の症例との手技比較など、さかのぼった研究発表の場合、オプトインが困難であるため、日本内視鏡外科学会としてはあらかじめ 「包括的同意」を取得し、研究開始前あるいは発表前にオプトアウトを徹底しておくことを推奨します。
一方、9例以下の手術手技に関する手術動画の『症例報告』発表であれば、包括的同意やオプトアウトの必要はないでしょう(Q&Aの7を参照してください。 例えば「△△を合併する例に対して、〇〇の手技が有効であった3例に関するビデオ報告」のような演題で、カテゴリーD1に分類されます)。ただし非常に稀 で特別な症例で個人が特定できるような場合は、オプトインでの同意取得を必要とします。
Q&A1でも記しましたが、包括的同意とは、診療情報や診療の一環として採取された検体(試料)や手術動画を、将来にわたってさまざまな研究に利用させていただくことを書面で承諾同意いただくものを指します。
5. 当院には倫理審査委員会がありません。学会発表はできませんか?
倫理審査委員会やそれに準じた諮問委員会を常設していない機関からの本学会への研究発表や論文投稿については、抄録登録前や投稿前に関連の大学病院や医師会などの倫理審査制度を利用して倫理審査を受けてください。日本医師会、日本内視鏡外科学会倫理審査委員会、また一部の都道府県の医師会でも倫理審査を受け付けています。各地区の倫理審査委員会のリスト、連絡先、手順などは厚生労働省の研究倫理審査委員会報告システムをご参照ください。
なお、内視鏡外科学会の倫理審査委員会が審査対象とする研究は(1)JSESが主導的あるいは協力機関として行うこと、(2)JSES理事長が承認した研究であること、です。
6. 所属機関長とは申請者の所属科の部長の認可でよいですか?
一般に所属部長の認可では無効となります。大学病院などの研究機関であれば、「研究機関の長」であり、理事長や総長等からの権限委任による病院長、センター長、学科長、学類長、研究科長などであり、その他の医療施設・研究機関であれば、センター長、機関長、理事長、組合長、病院長、クリニックではクリニック長などを指します。皆さまが所属されている研究機関や病院・機関の内規をご参照してください。
7. 9例以下をまとめた介入を伴わない症例報告は倫理審査が必要ですか?
10例以上をまとめた症例集積の報告から倫理審査が必要です。
同一患者の左右の臓器に手術を行った症例を6例集め、(例:ロボット支援下胸腔鏡下による一期的両側肺葉切除術の経験)両側手術にかかわる合併症や手術・ 予後などを主体とした研究の場合は6例とカウントするのが妥当と考えられます。しかしながら特定の手術手技の特性(ロボット支援下胸腔鏡下肺葉区域切除術 の経験)などについての症例をまとめた場合、同一患者の右側の区域切除と左側の区域切除について、独立した手術例(2例)としてカウントすることが妥当と 考えられます。
別の例としては、「臍ヘルニアと鼠径ヘルニアを同時に(腹腔鏡で)行なった場合」でも、「当科における腹腔鏡下ヘルニア修復手術の経験」という演題で、臍 ヘルニアと鼠径ヘルニアが別の日に行われて折れば2例(2手術)でしょう。「臍ヘルニアと鼠径ヘルニアの一期的腹腔鏡下手術経験」という演題であれば、 1例にカウントするのが妥当でしょう。このように研究や演題発表の解析目的や趣旨によっても解釈は変わります。
8. 自施設(機関)の大腸癌における開腹手術と腹腔鏡手術の合併症や治療成績、予後を学会発表したい場合には、倫理審査が必要ですか?
研究対象者の予後を含んだ各種臨床データを利用した研究は、各機関の倫理審査委員会や治験審査委員会あるいはそれに準じた諮問委員会での審査あるいは迅速審査と、それに基づく機関長の許可を得ることが必要です。この際、研究対象者あるいはその代諾者の承諾(IC)を得ておくことが 求められています。ただし、過去の症例にさかのぼってあらためて承諾を得ることが実質的に不可能な場合は、個人情報の保護規定遵守のもと、オプトアウトを 利用することで、あらためて患者の承諾を得る必要はありません。介入をともなうランダム化比較試験もしくは前向きのシングルアーム試験の場合はカテゴリー Cとなり、研究対象者または代諾者の承諾が必要となります。介入を伴わない既存の臨床データによる観察研究の場合はカテゴリーD1(研究対象者または代諾 者の承諾が困難な場合オプトアウトの利用可)となります。
9. 関連10機関の大腸癌における開腹手術と腹腔鏡手術の合併症や治療成績、予後をまとめて学会発表をしたい場合には、倫理審査が必要ですか?
5の場合と同様.研究に参加する全ての機関で倫理審査委員会あるいはそれに準じた諮問委員会での審査と、それに基づく機関長の 許可が必要です。さらに研究対象者あるいはその代諾者の承諾(IC)を得ておくことが理想的です。ただし、過去の症例にさかのぼってあらためて承諾 (IC)を得ることが実質的に不可能な場合は、個人情報の保護規定遵守のもと、オプトアウトを利用することで、あらためて研究対象者や代諾者の承諾を得る 必要はありません。
一方、連結可能匿名化データを提供するのみの共同研究機関では、必ずしも倫理審査委員会の審査を受ける必要はなく、その機関長の許可のもと、代表機関の倫理審査委員会での一括審査も可能です。介入をともなうランダム化比較試験もしくは前向きのシングルアーム試験の場合はカテゴリーC(研究対象者または代諾 者の承諾が必要)となります。介入を伴わない既存の臨床データによる観察研究の場合はカテゴリーD1(研究対象者または代諾者の承諾が困難な場合オプトア ウトの利用可)となります。
10. 食道癌手術症例における未承認医療機器(あるいは、適応外の医薬品使用)を使用した症例をまとめて報告したいのですが倫理審査会の承認は必要ですか?
医薬品の適応外使用や未承認医療機器を使用し、その有効性や安全性を明らかにする臨床試験は特定臨床研究に該当するため臨床研究 法を遵守する必要があります(カテゴリーA)。そのため下記の1-3を満たす必要があります。但し、2018年3月以前に開始され、なおかつ2019年3 月までに研究が終了する場合は、通常の介入研究として扱って差し支えないので、下記の3-4を満たすことが求められます(カテゴリーC)。
  1. 厚生労働大臣の認定を受けた認定臨床研究審査委員会での審査に基づく機関長の許可。
  2. 厚生労働大臣への届け出。
  3. 患者もしくは代諾者の承諾。
  4. 倫理審査委員会や治験審査委員会、あるいはそれに準じた諮問委員会の審査に基づく機関長の許可。
しかしながら、特定の医療機器の有効性の検証を目的としない観察研究の場合は、特定臨床研究に該当しないことが一般的です。臨床研究法QA問1―11(P3)、厚労省HPに該当性チェックリストがあるのでご参照のうえご判断ください。さらに該当性の判断に迷う際は、認定臨床研究審査委員会(CRB)や厚労省医政局研究開発振興課にお問い合わせください。
11. 患者の被写体(顔写真)などを発表で使用したいのですが、事後で同意を得る必要がありますか?
倫理審査委員会やそれに準じた諮問委員会での審査や機関長の許可、患者やその代諾者の承諾は不要です。但し、症例報告を含む医学論文及び学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指針を遵守し、プライバシー保護に配慮して患者が特定されないように留意する必要がありま す。
12. 続報のような発表に関しては、再度倫理審査委員会での審査を受ける必要性がありますか?
観察研究においては、解析等が承認を受けた内容であり、研究期間として明示されている期間内であれば新たに倫理審査委員会の審査を受ける必要はありません。
13. 公開されているデータベース、ガイドラインなどをまとめた研究発表は倫理審査を受ける必要がありますか?
倫理審査委員会の審査は不要です。しかし引用したデータベースおよびガイドラインなどを必ず明記してください(カテゴリーD1)。
14. ヒトの検体を使用した後ろ向きの研究発表に関しては、同意書はすべての患者に必要ですか?
基本的には改めて同意を得る必要がありますが、包括的同意がある場合、オプトアウトで代用可能です(カテゴリーD1)。ただし、包括的同意がない場合はオプトアウトが可能かどうかも含め、研究倫理審査委員会へご相談ください(研究対象により変わる可能性があります)。
15. 倫理審査委員会を通さずに発表することができますか?
倫理審査が不要な症例報告などのカテゴリーD1に分類される研究や発表は倫理審査委員会を通すことなく発表できます。それ以外の研究は倫理審査委員会やそれに準じた諮問委員会の承認を得る必要があります。
16. 発表する際には、「研究倫理」の手続きの開示を行うのですか?COIのようなスライドを作成するのでしょうか?
COIの開示は必須ですが、「研究倫理」については手続きを開示するスライドをご提示いただく予定は、現時点ではありません。ただし、自身の発表が倫理指針のどのカテゴリーに属する研究であるのかを、常に判断していただく必要があります。
17. 研究実施にあたり受けなければならない研修はありますか?
「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」には研修の履修を義務付けています。 この規定は研究責任者のみならず、補助者や事務職員に対しても倫理に関すること等、研究実施前の教育・研修を義務付けています。各研究機関での研修の取り 決めにしたがってください。 また、教育・研修に関するe-learningは下記で証明を受けることができます。
  1. JMACCT公益社団法人日本医師会治験促進センター
    臨床試験のためのeTrainingCenter
  2. eAPRIN e-learning program
  3. ICR臨床研究入門
18. 内視鏡外科学会関連の学術集会や学会で発表する医学研究や臨床研究の登録は必須ですか?
研究デザインが「介入あり、侵襲を伴う研究」【カテゴリーC】の場合は必須になります。観察研究の際は必須ではありませんが対外的に研究の透明性を表明することができるため、登録することを推奨します。
医学雑誌編集者国際委員会 (International Committee of Medical Journal Editors:ICMJE)に認可されている登録システムとして、
  • 臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT)
  • UMIN 臨床試験登録システム (UMIN-CTR)
  • 財団法人日本医薬情報センター(JAPIIC-CTI)
  • 日本医師会治験促進センター(JMACCT)
等がありますので参考になさってください。
19. 研究対象に患者さん等を含まず、ヒト以外の手術器具や診断装置を対象とする場合、また医療従事者を対象とする研究の場合は倫理審査委員会での審査は必要ですか?
本学会での発表に対しては、原則、倫理審査委員会による審査を求めていません。例えば、下記の≪例1≫のように医療機器を実際の臨床症例ではなく性能などをテスト・評価した場合や、≪例2-6≫のように医療従事者を対象とした場合は、倫理審査委員会での審査を求めていません。
ただし、医療従事者を対象とした教育・トレーニング等に関する研究や、医療従事者に対するアンケート調査の場合でも内容によっては、研究対象者に対して身体的・精神的負担等が生じる可能性および個人情報が含まれる可能性があることから、倫理審査が必要と判断されることもあります。この様な場合、機関の倫理委員会の方針にしたがってください。また医療従事者を対象とした研究であっても、≪例7≫のように患者データを含むものは倫理審査委員会での審査の対象となります。

≪例1≫ 単孔式肺がん切除術のために考案し、作成した鉗子と従来からある市販品について、胸腔モデル内で胸腔内操作の自由度についてそれぞれ検討する。

≪例2≫ 研修医10名を対象とし、内視鏡下縫合結紮手技の新しい練習方法導入前後での結紮手技にかかる時間の差異を検討する。

≪例3≫ 手術部看護師が内視鏡手術で感じる「仕事のやりがいとストレス」について無記名アンケートを実施、集計し、解析する。

≪例4≫ タイムアウトの導入後、手術室看護師の意識調査アンケートを行い、解析する。

≪例5≫ ロボット支援手術に従事する機械出し看護師10名についてリフレクション(看護実践後の振り返り)を10回開催する。リフレクション前後それぞれの看護師に業務に関する意識に及ぼすリフレクションの影響について半構造化面談を行い評価する。

≪例6≫  神経や血管吻合に使用されるマイクロ針は非常に小さいため、紛失のリスクが高く、取り扱う看護師にとって細心の注意が要求される。マイクロ針を取り扱う看護師の心理状況、経験年数、失敗の経験との相関を検討するため、手術室経験年数2~4年目・5~9年目・10年目以上の3群に分け、半構造化面談法によるインタビューを実施し、解析する。

≪例7≫ 卒後3年から20年の外科医20名が、2019年〜2020年の一年間に執刀した腹腔鏡下胆嚢摘出術における出血量・手術時間・合併症について後方視的にカルテデータをもとに検討する。外科医の年齢・性別・経験手術症例数も調査し、出血量・手術時間・合併症との間に相関が認められるかを解析する。
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