重症肥満に対する外科治療に対する見解
平成19年5月
重症肥満に対する外科治療に対する日本内視鏡外科学会の見解
1991年米国NIH(National Institute of Health)が重症肥満に対して外科治療法を推奨する声明を発表した後、肥満外科手術は欧米を中心に広く実施されるようになり、各種の術式が提案された。最近ではこれらの治療成績を基に手術適応や術式選択の基準が示されつつあり、肥満患者の急増と内視鏡手術の一般化がその普及に拍車をかけている。わが国では、本外科治療はすでに20年以上の歴史を有するものの、重症肥満の患者が比較的少ないこともありその実施数は欧米に比しはるかに少ない。しかし生活様式や食生活の変化に伴い手術適応となる重症肥満症例も増加しつつある。この機を捉えて日本内視鏡外科学会は、本邦における重症肥満に対する内視鏡外科手術が、先行する欧米の知見を踏まえつつ、日本の特殊事情にも考慮して安全で着実に普及することを希求して下記見解を表明する。
記
- 手術適応・術式選択にあたっては各施設において先行する欧米を中心としたこれまでの治療成績を踏まえ、適切な基準を設定すること。特に関連学会等がすでに発表しているコンセンサスを尊重すること。
- 本邦における胃がん発生頻度を考慮し慎重に術式を選択すること。 Gastric Bypassを選択にするにあたっては以下の項目に留意すること。
- (1) 術前の詳細な胃内視鏡検査。特にHelicobacter Pylori 感染の有無。胃粘膜萎縮、慢性胃炎などの所見の有無。
- (2)術後の胃検査の困難性について術前に十分な説明と患者の了解。
- (3)術後の定期的なフォローアップ。ダブルバルーン内視鏡などを用いた新しい残胃検査方法の開発・導入。
- 肥満が有する医学的・社会的特異性を熟知し、肥満内科治療医などの他領域の医師、栄養士、ソーシャルワーカー等と連携してチーム医療が実施できる体制を構築すること。
- 内視鏡手術実施前には十分な動物を用いたトレーニングや臨床における修練を経験すること。